2011年1月10日月曜日

読書傾向

趣味は読書と言うほどでもないが、本はよく読む。他の人の意見に左右されやすく、進められて読む本も多い。数限りなく読む本の中心は、自分の仕事関係の本と推理小説。これは自他ともに自慢できる読書量である。

その中でも建築関係の本を紹介してみよう。研修で鵤(いかるが)工舎の小川光夫氏の講演を聴いた。最初から終わりまで引きつけられる内容であった。特にNHKの「プロジェクトX」で紹介された彼の師匠である西岡常一棟梁に鍛えられた逸話が面白かった。別のスレッドでこの内容は記したい。

その影響でもないが推理小説家に、篠田真由美という作家がいる。彼女の建築探偵シリーズが面白い。彼女は早稲田大学第二文学部卒業で、主人公はW大生・・・一冊で内容は完結するが、主人公の時系列を追っての作品群はまったく飽きが来ない。1994年に「未明の家」でスタートしたシリーズも、2012年1月発売の「燔祭の丘」でいよいよ完結を迎える。19年にわたる作品群は国内は勿論、海外にわたって建造物をメインに据え、興味が沸く。

「翡翠の城」より抜粋
「でもね、私が一番好きな会津八一の歌はこれなの。法隆寺の秘仏夢殿観音を歌った歌よ」
 星弥は一度ことばを切って、顔を上げた。
「あめつちに、われひとりゐてたつごとき、このさびしさをきみはほほえむ」
「天地に、我ひとりいて立つ如き、この淋しさを君は微笑むー」
 なんだか不思議な歌だ、と蒼は思う。仏像のことを歌った短歌だなんて、前もって聞かなければ思いもしなかったろう。広大な天と地の間にただひとり立ちながら、絶対の孤独の中で静かに微笑んでいる人。いや、人ではないのかもしれない。仏というのはたぶん人間ではないのだから。それはとても美しいイメージではあったが、同時に心をしんと冷たくしてしまうほど非常にも感じられた。
「いいわね・・・・・」
 星弥のつぶやく声が聞こえた。
「どんなにいいかしらね、そんなふうにたったひとりで、なんのしがらみもなしに、誰ともかかわらずに立っていられたら・・・・・」